今日紹介するのは「ブルーフレンド」(えばんふみ先生)
以前紹介した「ワールズ・エンド」もそうなんですが少女漫画には時折こういう名作が出るからやめられない!
(⇒「ワールズ・エンド」参照)
今回紹介する「ブルーフレンド」はあの「りぼん」で連載されていた作品になります。
「りぼん」ですよ、「りぼん」!
少女漫画の代名詞的な「りぼん」で、こんな百合名作が連載されていたなんて……!
本当は全3巻なんですが、この二人の物語は2巻までで終了しているので、2巻までの紹介とさせてもらいます。
〇「ブルーフレンド」とは?(あらすじ)
〇百合ポイント
1、男嫌い×男勝りの鉄板百合!
2、最終話の締め方がずるい!
3、アフターストーリー
以上の構成で紹介します。
もちろん、ネタバレをふんだんに含んでいます。
嫌な方は、さっさと「ブルーフレンド」を読んでから、この記事を見に来てください。
この本を読まないことは百合分の損失です。
「ブルーフレンド」とは?
「百合」と聞いて思い出す色は何でしょうか?
やはり、百合の「白」が多いですか?
私の経験では「青」が多い!(独断)
百合作品の名作には「青」がつく作品が多いです。
まだ紹介していませんが丁寧な少女たちの交流を描いた「青い花」
SFとしても出来のいい「blue drops」
そのほかにも、キリがないほど青という単語は百合作品に登場します。
作品としては青春時代、中高を扱ったものが多いイメージですね。
作風はどちらかというとシリアスより。
思春期の女の子の友情と独占欲がごちゃ混ぜになった百合でよく取り扱われている気がします。
「ブルーフレンド」はまさしくそんな作品になります!
〇あらすじ
中学2年生の歩が出会ったのは同じ学年の美少女:美鈴。
歩はソフトボール部に入っている男勝りな女の子です。
美鈴は対照的に、誰ともかかわらず、ずっと一人でいるような女の子。
この二人が出会うところから話は始まります。
美鈴が気になる歩は友達になろうと積極的に話しかけます。
最初は頑なだった美鈴も段々と歩に惹かれていきます。
友達関係、男関係、美鈴の過去、歩と美鈴のすれ違い……。
様々なことを経て二人の絆が強くなっていきます。

これが「りぼん」で連載されていたとは!
今の時代の女子の中にも、百合は十分に育まれていますね。
百合ポイント
1、男嫌い×男勝りの鉄板百合!
この話は鉄板ネタを随所にちりばめております!
少女漫画を読んだことのある人なら一度は通った道がたくさん見受けられます。
まず、ヒロインである美鈴のキャラ設定。
・お嬢様、だけど家族仲は良くない
・過去の事件で男嫌い
・トラウマ持ち
という、非常に面倒くさい女の子の要素を全て詰め込んだような女の子のです。
これで美少女だと言うのだから、たまらない。
そりゃ、歩でなくても守ってあげたくなってしまいます。

対して、主人公である歩。
歩はソフトボール部に入っている、素直な性格の女の子です。
女友達も多くて、慕われております。
この二人が話の主軸になります。
1話の出会いから始まり、1話の終わりで美鈴はキスまでしているという展開の早さも見物。
面白いのは人と関わるのを避けていた美鈴の方が歩との関係に独占欲を持ち始めることろですね。
これは「ワールズ・エンド」でも見られたことですが。
今まで一人きりでいた女の子って、大体、傷つくのが嫌で女の子の輪に入れないんですよね。
女の子って可愛いけど残酷だから。
ちょっとしたことでイジメたり、悪口を言うわけです。
対した悪口じゃないんですよ。
「生意気そう」「性格悪そう」とかそういう奴。
そういうどこにでもある悪口でも傷つく人は間違いなくいるわけです。
そういう子は、自分を守ってくれる(傷つけない)ってわかる女の子に一気に傾倒してしまうんですよねぇ。うんうん、百合百合。
2、最終話の締め方がずるい!
この「ブルーフレンド」全七話に後日談がついております。
まず、最終話から説明するので、ネタバレが嫌な方は読み飛ばしてください。
最終話、歩と二人で別荘にこもっていた美鈴は自殺を試みます。
それを発見して、助けるのが歩。
歩は美鈴が目を覚ますまで付き添います。
そして、目を覚ました美鈴は「歩みたいになれるように頑張る」と歩に告げます。
それに答えた歩がいうこのセリフがずるい!
「ずっと、あんたの傍にいてあげる」
(りぼんさん、この終わり方は酷いと思うんだ……萌え的に)
この上から目線。
この上から目線。
色々あったのにも関わらず、これからも美鈴を支えていこうと決心している器の大きさ。
いやはや、思春期の恐ろしさが表れております。
この最終ページの良さを味わうためには、全ての話をきっちりと読み込まなくてはなりません。
その分、最終話が感慨深いものになります。
特に「人生をかけて美鈴を支えられる人間になる」とか言っちゃってますから。
歩の人柄の良さに美鈴も惹かれたんでしょうねぇ。
余談ですが、美鈴は歩に「好き」「歩しかいらない」と告白しています。
最終話の「あたしは初めて人に恋をしたよ」は名セリフです。
この漫画で一番好きなシーンかもしれない。
でも歩は一度も美鈴に「好き」だとか似たような言葉は告げていません。
これが少し寂しい……うん、寂しいですね。
「支えたい」「守りたい」「友達でいたい」とは思っても、歩は「好き」とは言わないんです。
いくら強く想いあっていても、同じ想いではないんですよ、この二人。
このすれ違いが、百合の良さでもあり、悲しさでもあると私は思います。
3、アフターストーリー
上のような終わり方をした二人ですが、実は後日談があります。
後日談は美鈴視点です。
色んな事があった最終回の後、美鈴が変わるために努力をする話になります。
この後日談がまたいい!
読んでない方は、絶対読んだ方がいいと思います。
この話があるからこそ、見えてくるものも多いです。
「歩を好きと自覚している美鈴の話」になりますので、百合度も急上昇しています!
最終的には別々の高校に通っている二人の話になるんですがその最後のコマがこれ⇓

「あたしのずっと大切な人」
これはもう、どうしろと。
百合に悶えて死んだ場合、死因は「百合死」になるんでしょうか?
これがあるから百合は怖い。
これがあるから百合は面白い。
付き合っているかはわかりません。
告白シーンやキスシーンは幾度となくありましたが、確実に付き合っているという描写はありませんでした。
その状態なのに「あたしのずっと大切な人」って友達に言える関係なんですよ!
いや、やはり、付き合っていて、でも恋人とは言えないから、「大切な人」表現なのかも?
(こういうのを考えることさえ百合の楽しみです)
どちらにしろ、どんな尊い百合ですか……!
美鈴が高校に行くまでの間に成長している場面も描かれています。
「歩に支えてもらえなくても一人で立てる人間になりたい」
「歩を支えられる人間になりたい」
と、美鈴はずっと思っていたのです。
だからこそ、違う高校を選んで歩と離れました。
後日談は最後のシーンをどう解釈するかで全然違う話になると思います。
もしかすると二人は付き合っていて、この上のシーンに繋がっているのかもしれない。
もしかすると二人は付き合っていなくて、この上のシーンに繋がるのかもしれない。
ぜひともその葛藤を味わうために読んでみてください!
まさしく百合、百合、おおお
って感じでした。
この作品が少女漫画の中で唯一読んだことのある
百合本なのですが、上質な百合さにのまれてしまいました。