またもや、カクヨムで好みの百合小説を見つけたのでおすそ分けしますっ。
タイトルは【ライバル令嬢に転生したので悪役令嬢を救いたい】!
名前だけで、百合の尊さを感じられますよねー……

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転生ものでありながら、TS百合というわけでもなく、女子高生が自分のやりこんだゲームの令嬢に転生する形式です。
悪役令嬢ものでは、物語は3パターンにわかれます。

・ヒロイン
・悪役令嬢そのもの
・その他

このどれかに、転生して物語が始まるのがほとんどです。
【ライバル令嬢に転生したので悪役令嬢を救いたい】では、タイトルの通り「ライバル令嬢」に転生します。
ライバル令嬢とは悪役令嬢と似たようなポジションでありながら、悪いこと(主人公をいじめたり)しないため、没落や処刑など悲惨な運命を辿らずにすむキャラクターのこと。
上でいえば「その他」です。

ヒロインでもない、悪役令嬢でもない、物語を変える力を持たないライバル令嬢として、主人公は転生してしまいます。
彼女がゲームで一番印象に残っていたのが悪役令嬢であるクレアラートの最期です。

――努力を誰にも認められず、悪役として裁かれ、貴族としてのプライドもズタズタにされ、婚約破棄。

主人公はその場面を見て、悪役令嬢を救いたいと強く思います。
物語的には仲も良くないライバル令嬢になった主人公が、大好きな悪役令嬢を救うために、頑張るのが【ライバル令嬢に転生したので悪役令嬢を救いたい】です!

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目次
◯【ライバル令嬢に転生したので悪役令嬢を救いたい】とは?
◯【ライバル令嬢に転生したので悪役令嬢を救いたい】オススメ内容
1、悪役令嬢を悪役令嬢として形作るものの美しさ
2、正反対でも似ている令嬢二人の恋物語
3、他の人のために頑張れる女の子がいっぱい!
◯まとめ

【ライバル令嬢に転生したので悪役令嬢を救いたい】とは?


このごろ流行りの「悪役令嬢もの」ってご存知ですか?
小説にも、アニメにも「悪役令嬢」の文字が踊る日々が来るとは、つゆにも思っていませんでした! 「悪役令嬢もの」とは、乙女ゲームなどに登場するライバルキャラ=悪役令嬢が中心に物語が進んでいくものになります。

これが面白いんですよ!

乙女ゲームで遊んだ人ならば、主人公のライバルとして登場する悪役令嬢の存在は馴染み深いはず。乙女ゲームの先駆者だった『遙かなる時の中でシリーズ』にも、必ずライバルキャラクターが存在します。

ええ、実はこの手のゲーム、大好きなんです!
もっともライバルを攻略するためにやってるので、純粋な乙女ゲームの遊び方とは違うんですが……。

乙女ゲーム、私のような百合好きにも優しい作りになっているものが多数あります。その結果、普通の男性キャラルート以外にも、友情ルートと名付けられたルートが存在するものも!

今ほど百合があふれる前ですから、友情ルートだろうと、なんだろうと、私には百合ルートでした。そのときに抱いた「悪役令嬢を救いたい」が、まさかこんな素晴らしい小説になって帰ってくるとは……やはり、私以外にも似たような思いをした百合好きがいるんですね。

閑話休題

「悪役令嬢もの」とは、ライバルキャラクターや、普通悪役として扱われるキャラクターの立場で話が展開していきます。
私が知る限りで、一番登場が早かったのは『悪役令嬢後宮物語』でしょうか。
これは悪役の家に生まれついた主人公が、国を立て直すために後宮で奮闘する物語です。

ヒロイン役を陰ながら助ける主人公に「もっと行け!」と思った百合好きは私だけじゃないはず!

このジャンルならば、いつか百合みにあふれたものが出てくるはず……そう信じていました。
ついに【ライバル令嬢に転生したので悪役令嬢を救いたい】という、タイトルからして百合の尊さを感じられる小説を発見したのでおすそ分けします。


【ライバル令嬢に転生したので悪役令嬢を救いたい】オススメ内容

1、悪役令嬢を悪役令嬢として形作るものの美しさ

悪役令嬢ものが、なぜ面白いか。
それって、結局、没落する運命の“悪役令嬢”が魅力的だからこそ!
「悪の美学」なんて言われたりもしますが、正義をかっこよく目立たせるには、悪役にもかっこよさがないといけません。

【ライバル令嬢に転生したので悪役令嬢を救いたい】の悪役令嬢は、公爵令嬢として努力を重ねるクレアラートです。
このクレアたんが、凄まじく可愛らしい。
最初は非常にツンツンいているんですが、主人公であるエルザの努力もあって、どんどん可愛らしくっ……!
語りだすと止まらなくなるので、本編を読んでください。


彼女の本質を表す部分

まず、クレアは「家名がすべて」という価値観に育ちました。
個人としての価値はすべからく認められず、いかに公爵家であるエルトファンベリア家にふさわしい娘であるかのみで評価されてきた影響です。

人としての性格が良かったとしても、その前に家名にふさわしい振る舞いができているかが大切です。人として正しくても、貴族として間違っていると、クレアには何も響きません。
その攻撃があまりにも攻撃的すぎるのが悪役令嬢たる由縁かもしれませんが……。

クレアがすごいのは、この評価が自分にも適応されるところ。

彼女は「ただのクレア」として褒められたことがありません。
どんなに頑張っても「エルトファンベリア家の長女にふさわしい娘」と言われるだけです。
つまり、彼女はエルトファンベリア家であることがすべて、だと思っています。

エルトファンベリアでない自分は価値がないとさえ思う始末。
これって、すごく悲しいことですよね……。

この「家名がすべて」という価値観が、面白い化学変化を起こしていきます。
読んでいるうちにそういうことか!となってしまう展開は、作者さんの力量が発揮されている部分です。

クレアはテンプレ通り、第一王子の婚約者であり、国最大の公爵家であるエルトファンベリア家の長女として描かれます。
公爵家の長女として、家名を汚さないように、陰ながら努力を重ねてきました。しかし、物語ではその努力を知られることなく、ヒロインをいじめたとして貴族の地位を剥奪されてしまいます。
断罪シーンがあまりにも悲惨で、ライバル令嬢であるエルザに転生した主人公は「クレアを救いたい!」と強く決心します。

ここからがこの作品の他と違うところなんです!
他の作品では、悪役令嬢自身になるか、ヒロインになるか。このふたつのどちらかになる場合が多いです。

しかし、主人公がなったのは「ライバル令嬢」
この役割では物語を大きく変えることはできません。
できることといえば、クレアのサポートくらいなわけです。

ほかの話がゲームの物語自体を変えたりするのとは違い、この作品では本筋はそのままで進んでいきます。(つまり、断罪にむかってまっしぐら)
とくに途中まで良い感じにクレアが変わっていたのに、ある時から突如、物語は本筋のまま進んでしまうのです。

なぜそうなったのかわからないエルザですが、とにかくクレアを救いたいと、右往左往しながら行動します。わけがわからなくても、救うしかない。救うしかないなら、動くしかない。

もうね、尊いどころじゃないですよ。

クレアが突然、本筋通りヒロインをいじめだした理由が明らかになるとき、そこには他の悪役令嬢ものでは見られなかった大輪の百合の花が咲いています。

ちなみに、きちんと最後は幸せになりますので、ご心配なく。
なんだったら、途中のドキドキハラハラは最後のイチャラブまでの花道です。
ふたりの心情を察しながら、見守りましょう。


2、正反対でも似ている令嬢二人の恋物語

物語の軸はこの二人です。
・ライバル令嬢のエルザ
・悪役令嬢のクレア

上でも書いたように、クレアは「家名命」のお嬢様です。
彼女はその価値観で全て動いています。
だからこそエルトファンベリアとしてではなく、“ただのクレア”を好きと言ってくれたエルザに惹かれていきます。

対して主人公であるエルザは「クレアを救う」ために手を尽くします。
クレアの家名命という価値観を知っていながら、彼女にクレア自身の価値を認めて欲しいと思っています。
また彼女を救うためなら、婚約者である王子に文句を言いますし、自分が傷つくことになっても構いません。

――いいですか、ここ重要ですよ。

百合小説として、大変推せると紹介しました。その気持は変わっておりません。
上のちょろっとした紹介文でも十分に百合みにあふれていることがわかるでしょう。

しかし、実はこの二人、結構物語が進むまで恋心を自覚しないんです!

びっくり。
本当に、結構終盤まで自覚しません。
自覚してないのに、している行動は恋人も真っ青なところがありますから、百合分は心配しなくても大丈夫です。

たとえば、「私だと思って」とネックレスを渡すとか(序盤)
王子、クレア、エルザ、エルザの幼馴染でダブルデートに行って、なぜかクレアとエルザが一番イチャイチャするとか(中盤)
距離ができても「エルザがつけてくれた印なら残したい」とアザの上書きしたり、というヤンデレぶり(終盤)まで。
その他、いろいろな場面で抱きついたり、髪をなでたり、スキンシップしまくりです。

なんかね、生ぬるく見守りたい二人なんですよ。
無自覚なのが最後まで本人たちという、いらんところまでそっくりな二人ですから。
とくに最後の方では、クレアから受ける印象は完全にヤンデレよりのデレデレです。
それなのに彼女の行動が理解できなくて、クレアも読者もオロオロします。

エルザは今まで“家名”以外、何も認められたことがない女の子。
序盤でクレアから自分の欲しい物「自分自身」だと気付かされます。
その効果が最後まで尾を引くんですが、印象的なのはこのシーンでした。

「わたくしの欲しいものは、私」

そう自覚してつぶやいてしまう場面は、拍手喝采で応援したくなる名場面です。「自分探しの旅」は昔から変わらず若者のテーマですが、それを上手いこと話に盛り込んでます。
エルザにとって、クレアは今まで知らなかった自分を教えてくれた人。しかも、それを認めて、喜んでくれた特別な人になります。

――ここまでわかってるのに、恋心の自覚が最終盤までないって……。

逆にいえば、百合の一番美味しい部分である「恋心の自覚」が遅くにくるので、それまで無自覚にイチャイチャする二人を存分に楽しめます。

嬉しいことに、ちょくちょく幕間やIFが入ります。そのIFのタイトルが「交際一週間」だったりするんだから、百合分も爆発的に補給できるってもんですよ!

ええ、本編で中々進まないわりにイチャイチャする二人を楽しみ、番外編で百合分を爆発的に補給する。こんな良い百合小説があるでしょうか?!


3、他の人のために頑張れる女の子がいっぱい!

基本的にこの話、優しい人がいっぱい出てきます。優しい世界です。
誰一人として、自分のために行動している人間がいない世界なんですよ!

たとえば、エルザは「クレアを救うため」
クレアは「家名を守るため」→「エルザを引き止めるため」
ヒロインは「新しい家族を守るため」

舞台設定としては、中世なんですけど、女性の地位が非常に確立されてます。
女性だからできないこととかが出てこない!
そのため、出てくる女性キャラクターみんながとても魅力的に描かれています。

エルザとクレアは散々語ったので、他のキャラクターに目を向けましょう。

まず、忘れてはならないのが、ヒロインであるマリーナです。
マリーナは、平民として育ちますが、実は前国王の娘であり、王家として15歳になってから取り立てられます。そのため、貴族としてのマナーや礼儀がちっともなっていません。
これがクレアの「家名命」を刺激しまくり、王子と仲良くなる前から目をつけられています。

ですが、彼女が色々と頑張るのは、実は義妹であるティーのため
王子と仲良くなるにつれ、きちんとそっちも理由になるんですが、その発端に義妹がいます。
エルザがクレアを救うために頑張っているなら、マリーナはティーを幸せにするために頑張っています。
ヒロイン×義妹なんて、百合ゲームにも中々ない展開を味わえますよ!

次に紹介したいのは、エルザとクレアのお付きのメイドたち。
エルザ付きのメイドがアニー。クレア付きのメイドがリム。
これがまた、いい子たちなんですよー!

アニーはエルザが小さい頃から、ずっと付いてくれているメイドになります。
エルザのことを常に完璧にサポートしてくれる心強い存在です。
彼女がエルザに仕えてくれる理由も「お嬢様(エルザ)に仕えたいから」!
こんな主従百合の理想形、中々見られませんよ?!

リムもアニーに負けていません。
クレアが孤児院から引き取ってきたという馴れ初めもあってか、まだ小さいながら専属メイドとしてクレアのサポートをしています。
クレアがエルザを遠ざけたときでさえ、リムは常にクレアの側にいました。

この二人の協力なくして、エルザとクレアの恋は成就されなかったとさえ言えます。
もちろん、幕間の短編も美味!
百合の花が咲き誇るところをご賞味ください。


まとめ


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
書きたいことが多すぎてまとめ切れてないかもしれません。

数ある悪役令嬢もので群を抜いて面白い作品でした。
百合作品としてはもちろん、ひとりひとりの想いの強さが物語になるということを、びんびん感じさせてくれる作品です。
諦めずに行動することでしか未来は変えることはできません。
クレアがエルザを救いたい一心で彼女の価値観を変え、恋になり、さらには未来を掴み取る……。

社会の逆風に吹かれて疲れているときこそ【ライバル令嬢に転生したので悪役令嬢を救いたい】を読みましょう。

二人の物語に、ニヤニヤして、涙して、またニヤニヤできる――そんな素晴らしい作品でした。

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