「眠れる森の美女」はどこにいったんでしょう?!

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コメントをもらったので、ワクワクしながら、マレフィセント2見に行きました
最初の感想が冒頭のものになります。
良い意味でも、悪い意味でも、マレフィセント2は期待を裏切っています。

まず「マレフィセント2」は、マレフィセントのルーツのお話です。
前作で、眠れる森の美女要素はすべて消化しています。
あれにどうやって、続編を作るんだろ?とは思っていました。
思っていましたが、まさかここで大胆に物語をつくるとは……ディズニーの力技、すごい。

マレフィセントって、考えてみれば謎ですよね。
なんであんなに強いのか、なんで妖精の中でひとりだけ翼があるのか。
そういった疑問に答えてくれるのが「マレフィセント2」!

とりあえずの注意点としては「完全に大人向けなので、小さい子向きではない」こと。
これ、ディズニーだからって、子供が見に行くとトラウマになります。
アラサーが見たって、ショックなんだから、子供が見たらもっとショックだわ!
人間と妖精の対立というか、人間の残酷さが見事に描かれすぎてます……。

そのほかには
・女の戦い、怖い
・マレフィセントのオーロラへの愛がやばすぎる
・自然破壊と人種差別をやめましょう
が、感じ取れたテーマになります。

では、細々と語らせてください!

*ネタバレが多々存在します。

目次
◯『マレフィセント2』とは?
◯『マレフィセント2』オススメ内容
1、イングリス王妃がまじ怖い
2、マレフィセント、オーロラを好きすぎる!
3、男の存在感、薄くて、必要性を疑う
◯まとめ

『マレフィセント2』とは?


マレフィセントが百合だった件については、こちらの記事をどうぞ(「マレフィセントとアナ雪をくらべてみた」)
私の中で、マレフィセントはやばいくらい百合作品です。
そして、マレフィセント2でもそれは変わりませんでした!
以下、あらすじ↓

マレフィセントがオーロラ姫との間に、恋愛でも血の繋がりでもない“真実の愛”を見つけてから数年後。オーロラ姫とフィリップ王子は、めでたく結婚することに。しかし婚礼の日、フィリップ王子の母イングリス王妃が仕かけた罠によってマレフィセントとオーロラ姫の絆は引き裂かれ、究極の愛が試されることになる。(映画.comより)

何、この百合を見つけろ、とばかりの紹介文!
前作で、オーロラはマレフィセントのキスで目覚めました。その時点で「真実の愛」があるのはわかっていました。
わかってたけど、あらためて文章になると衝撃が。

そして、その直後に「オーロラ姫とフィリップ王子の結婚」と書かれるのも、衝撃。
まぁ、そうですよね。「眠りの森の美女」モチーフなら、そうならないとおかしいです。
百合みは消失してしまうのか、ドキドキしながら、見に行きました。

結論、ここ最近のディズニー、女性が強すぎませんか?

オーロラとフィリップは、確かに結婚しました。
結婚したけど、この映画が話したのはそこじゃない!とばかりに、目立ちません。
代わりに目立つのは、イングリス王妃。

この映画を見て、頭に残ったのは三人だけ。


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イングリスとマレフィセントとオーロラ。
三人以外にも重要な存在はいるんです。いるんですけど、この三人のインパクトが強すぎて霞むの!

ということで、以下、具体的に話していこうと思います。


『マレフィセント2』オススメ内容

1、イングリス王妃がまじ怖い

イングリス王妃、まじ怖い。
二回言っても、言い足りないくらい、怖いです。

何が怖いって、彼女、普通の人間なんですよ。
魔法の力も、ヒーローでもヒロインでもない。
ただの王妃なんです。彼女が持っているのは、王妃としての権力だけ。
それでも、マレフィセントを倒し、妖精を根絶させる作戦を練り上げ、実行してしまうんです。

とくに怖いのが、この3つ。
・妖精を根絶やしのために、一瞬で妖精を殺す武器を作成
・マレフィセントを悪者にするために、事前に悪い噂を流しておく
・作戦の実行のためには、王様を呪うことも厭わない

用意周到すぎて、まじ怖い。
おとぎ話の悪役レベルじゃないんですよ。
もう普通に参謀とか、推理もののラスボスレベル。
彼女のせいで、この映画のインパクトが段違いにあがります。

イングリス王妃の根本にあるのは復讐です。
小さい頃、自分の国が飢饉で苦しんでいるとき、ムーア国(妖精の王国)は栄えてました。
この飢饉が原因で、イングリス王妃は兄を亡くし、さらには逃亡しなければならない羽目に。
それでも王妃になれるあたり、元から駆け引きが得意な女性なんでしょう。

結婚した旦那(王様)は、妖精の国と融和を願っています。
その上、お腹を痛めて生んだ王子まで、妖精の国の女王(オーロラ)と結婚すると言い出してしまう。
イングリス王妃にとっては、腹立たしかったに違いありません。

もうね、最初の登場からして怖いのよ。
王様が「武器はいらない」と言っているのに、イングリス王妃は「いえ、いつ必要になるかわかりません。油断大敵です」みたいなことを言うんですよ!
見てる誰もがわかります。「王妃様、戦争する気満々!」って。

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そして、物語は予想通り、人間と妖精の戦争へと転がっていきます。
始めたのもイングリス王妃なら、最後まで戦うのもイングリス王妃です。

途中、子供ならトラウマになる妖精虐殺シーンもイングリス王妃の企みです。
オーロラの結婚式に参列した妖精たち。
彼女たちが、礼拝堂に閉じ込められ、音楽とともに放たれる鉄の粉で消えていく様子は、ガクブル……!
魔女でもなんでも無い、普通の人間でも、いくらでも残酷になれるんだなと思い知らされるシーンです。

まぁ、彼女のおかげで、マレフィセントがオーロラのために頑張るシーンがてんこ盛りに。
徹頭徹尾、自分のしたいことだけをする。かなりの悪役っぷりです。
自分の願望のためなら、すべてを利用し、だます女の怖さを凝縮したようなキャラクターになってます。


2、マレフィセント、オーロラを好きすぎる!

前作、マレフィセントでも、オーロラを好きすぎてツンデレみたいになっていました。
今作では、さらにパワーアップ。
マレフィセントの感情や行動は、オーロラのことでしか動かないんじゃないかと思えるほどでした。
もうね、溺愛すぎですよ。オーロラのこと。

勝手に、百合視点でも萌えた部分を挙げていきます。
・オーロラとフィリップの結婚で、機嫌を損なう
・オーロラのためなら、笑顔と挨拶の練習もする
・オーロラのピンチを救うために登場
・オーロラの顔の傷で、激怒
・オーロラを庇って、灰になる
・オーロラの涙で復活





まだまだ、あるんですが、オーロラという字がゲシュタルト崩壊しそうなので、これくらいにしておきます。
とにかく、マレフィセント、オーロラ好きすぎです。
最終的にふたりの結婚を祝福して、ダークフェイの子供を育てるようになるんですが……よく、この映画の中でそこまで成長したなと思えます。
オーロラだけに注がれてた愛が、最終的に子供全体に行き渡るようになった感じでしょうか。
まぁ、オーロラに何かあれば飛んでいくのが目に見えてるんですけど。

「うわ、まじでオーロラのこと大切なんだ」と思ったのは、オーロラのために、絶対したくないことさえ練習する場面。
大切な娘のためなら、嫌なことも我慢します。その心意気が尊い……!
それもイングリス王妃の、ちくちくとした嫌がらせと罠の前に決裂します。
あんな頑張ってたのになぁと見ているほうの胸の痛みも倍増です。

そして「うわ、ディズニー、やりすぎじゃない?」と思ったのは、マレフィセントが灰から復活するシーン。

*最大のネタバレですので、ご注意ください。

今作で、マレフィセントはダークフェイ(闇の妖精)という種族だと判明します。同族も登場。
ダークフェイは、もともとフェニックスが祖先の一族です。そのため背中には翼があります。
そして、彼らが最終的にたどり着くのが「死と再生の力」=フェニックスの力になります。

マレフィセントがこの力を手に入れる部分も映画では描かれています。
描かれているんですけど……たぶん尺が足りなかったのでしょう。
めっちゃ、はしょられすぎてて、分からない!

とりあえず、マレフィセントが力を受容して、オーロラを助けに行きます。
このとき、わかりやすく、ユニフォームも変わるのも芸が細かい!

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ニューマレフィセントはあっという間に人間を押し返し、イングリス王妃を追い詰めます。
ここでオーロラをかばったマレフィセント。
イングリス王妃の発明した、妖精殺しの粉を浴びて灰になってしまいます。
オーロラは号泣ですよ。真実の愛の相手が、自分のせいで灰になったんですから。
そのまま王妃に掴みかかろうとするあたり、マレフィセントに出てくる女性は強すぎる……。

で、ですよ。
それで、灰から復活する展開はわかるんです。
だってフェニックスが祖先なら、そんな展開もありえるでしょう。

問題は、その灰から蘇るときに、なぜか、オーロラの涙が媒介になってること!
オーロラの涙がなければ、蘇れない、みたいに見えてしまうことですよ!!
百合好きでも、思います。

……え、その涙必要?って。

もう復活の理由は十分です。祖先がフェニックスですよ。
フェニックスは一度死んで灰になっても、そこから新しく生まれる神様ですよ?!
普通に生き返れるでしょ!

まぁ、いいんです。
ディズニーさんが、それを必要とするなら、それでいいんです。
いいんですけど、やりすぎじゃない?くらい思わせてください。

この頃のディズニーさんには、ほんと、頭が下がる思いです。
ありがとうございます。


3、男の存在感、薄くて、必要性を疑う


さて、最後の言いたいこと。
前も思ったんですが「マレフィセント」って、王子と王様いらないんじゃないでしょうか。

呪われる役とか、発端の役として必要なのはわかります。
今回もフィリップ王子のプロポーズが発端ですから。
王妃が作戦を始めるのにも、王様が倒れる必要があります。
そういう必要性は十分、感じてます。

それでも、この二人ほとんど登場しないから存在感が薄いんです!

なんかねー、イングリス王妃とマレフィセントは言うに及ばず、オーロラさえめっちゃ行動的なんですよ。
オーロラ、話の途中でイングリス王妃の企みに気づいてしまい、監禁されるんですけどね。
シーツとドレス(しかも、結婚式用)破って、結んで脱出するんですよ。
紐からブラーンで、フィリップがいる部屋にガラスを突き破りながらダイブするお姫様、みたことあります?
それを上手いこと抱きとめる王子は、さすが王子ですけど。
そんなことさせる前に助けろよ!と思わなくもない。

「マレフィセント」って、オーロラのピンチを助けるのは基本的にマレフィセントなんですよ。
オーロラもそれを知っていて行動する場面もあります。
今作では、それが通用しないことが多くて、オーロラさん、マレフィセントの大切さに気づきます。
ええ、そんな場面ばかり続くので、本当に男たちの存在意義を問いたい。

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↑マレフィセントがいなくなって、探すオーロラさん。

というか、作ってる方も、扱いが適当すぎると思うんですよ。
・なぜ、オーロラとフィリップの愛を育む場面がないのか
・結婚式の扱いが雑すぎる
・王様もフィリップも、自分の頭で考えてない
などなど、言いたいことがいっぱいあります。

一番言いたいのは「オーロラとフィリップの愛を育む場面のなさ」です!
前作も今作もこの場面がないから、視聴者はさっぱり追いつけません。
きっと前作ののち、なんか色々あったんでしょう。
おとぎ話のお姫様は一目惚れで結婚するしね!

それに比べて、マレフィセントのオーロラに対する愛の表現が多すぎです。
上で書き忘れましたけど、オーロラ、窓ガラス破るときに負傷します。
戦士顔負けの傷を顔に作るんです。まじ、イケメン姫。
それを見たマレフィセントが大激怒……話さなくても怒りって伝わるんですね。
「火に油を注ぐ」の例題にしたいくらいでした。

主人公はマレフィセントですし、マレフィセントの愛は基本的にオーロラへ向いてます。
だから、オーロラとフィリップの間の愛は横に置かれた感が……。

フィリップが活躍したのは、戦争を止める部分です。
王様に至っては、ほぼ何もしていない。最後にマレフィセントが呪いをといて、起き上がってくる始末。
オーロラとも、マレフィセントとも関わりが薄いんですよね。
その結果、存在感も薄くなってしまいました。

今回の話も、ふたりの結婚式にかこつけて、マレフィセントとオーロラの愛が強くなります。
あらすじでも「究極の愛が試される」なんて言っている始末です。
こういう展開もさもありなん。

話の始まりは、マレフィセントとオーロラの決裂。
話の終わりは、マレフィセントとオーロラの仲直り。
この親子に振り回される作品といえるでしょう。

もうね、マレフィセントとオーロラが仲直りした途端、すべてが収束していくのが面白い。

ああ、このために色々争ってたのね、とさえ感じられます。
マレフィセントの世界は「マレフィセントとオーロラの愛がすべて」
男の存在感も薄くなるものです。


まとめ


とても長くなりました。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。
百合目線で語らせてもらいました。

まとめでいうのもあれですが……すっごく、壮大な話なんですよ!
人間vs妖精。文明vs自然。文化vs文化。
ちょっと挙げただけで、ディズニーさんがいかに重厚なテーマをこの映画に込めたかわかります。
この映画に込められたメッセージは、きっと「自然破壊」とか「人種差別」とかなんだと思います。

人間だからといって、好きに自然を壊して良いわけでもないし。
違う種族、文化だからといって、差別して良いわけでもない。
対話して平和に向けて歩んでいきましょう!

そういうことが言いたい映画なんだと思います。
……まったく違う視点で、楽しんだ私が言うのもなんですが。

そういう意味も含めて、大人向けの映画です。
子供はトラウマになると思うので、気をつけて下さい。

では、また百合話でお会いしましょう。




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