最強ものと悪役令嬢ものは、表裏一体の存在じゃないだろうか。

そんな疑問を抱いたのは、私がこの2種類が大好きだからである。
アラサーもアラサーであるが、この種類の小説が面白くてたまらない。
それはきっと、物語として筋が通っているからなのだ。

筋とは、つまりテンプレ
テンプレでありながら、中身は違う。
それが世の中でこのふたつのジャンルが大流行している理由じゃないだろうか。
そんなことを考えた。

その中でも、おすすめしたいのが『私の推しは悪役令嬢』である。
タイトル通り、悪役令嬢もの。
そして、悪役令嬢ものと百合をものの見事に融合させた小説だ。

ただの悪役令嬢ものには収まらない。
百合から一歩踏み込んで、セクシャリティの話まで含まれている。
この部分を小説に組み込むのは、とても難しい。
面白さとイチャイチャさと、ほんのちょっとの問題提起。
これらをうまいこと物語として成り立たせている。

きちんと完結しているうえに、キンドルさんでも読める。
ぜひ、手にとってもらいたい一冊だ。



目次
◯『私の推しは悪役令嬢』とは?
◯『私の推しは悪役令嬢』オススメ内容
1、乙女ゲーの中に咲く百合
2、革命せよ!
3、セクシャリティについて
◯まとめ


『私の推しは悪役令嬢』とは?


いのりさんが、連載していた百合小説が『私の推しは悪役令嬢』だ。
連載は、2種類。小説家になろうとカクヨム。
両方、内容に差はないので、好きなほうで読んでもらいたい。

GL文庫さんからも、電子書籍として出版されている。
こちらは、Kindle unlimited に入っていると、無料で全部読めるという、素晴らしい文庫さんだ。(→GL文庫さんおすすめ小説

そうなると、なろうとカクヨム、さらにはKindleと3つ読みたい方法で読めることになる。
時代は進んだ。
百合小説を探すために、当たりかハズレか考えなくて良くなったのだから。
まったく、百合好きに優しい世界になってくれて嬉しい。

今日は、そんな『私の推しは悪役令嬢』について、語りたい。


『私の推しは悪役令嬢』オススメ内容


1、乙女ゲーの中に咲く百合

乙女ゲーの中に、百合があることをご存知だろうか?
乙女ゲーとは、主人公が女性で、好きな男性を攻略するという、アレである。
その内容で、どうやって百合が存在するのか。
そりゃ、もちろん、攻略対象として堂々とのっているわけではない。

攻略対象は基本的に男性だ。
しかし、この手のゲームは、必ずライバルキャラや、サポートキャラがいる。
ライバルやサポートは、基本的に同じ立場の女性キャラだ。
乙女ゲーには、このライバルキャラやサポートキャラとの友情ルートが備えられているものがあるのだ!
いや、素晴らしい。なんと、素晴らしい機能を開発してくれたのだろう。

百合がここまで普及する前、私はこのライバルやサポートキャラのルートを狙って乙女ゲーをしていた。
もちろん、普通に攻略もする。普通に攻略することで、見えてくるライバルやサポートキャラの側面も多い。
それでも、結局、カワイイ子の誘惑に負けて、攻略対象を攻略できなかったことは数知れない。
あれは、百合好きの精神力を試している。確実に。

『私の推しは悪役令嬢』は、まさしくそういう私の気持ちを代弁した作品といえる。
なぜなら、主人公は乙女ゲーのヒロインとして転生したにも関わらず、いちばんの推しは悪役令嬢なのだ。
悪役令嬢。攻略対象との恋路を邪魔する、いわゆるお邪魔虫的キャラクターである。

乙女ゲーのヒロインのくせに、攻略対象には目もくれず、悪役令嬢であるクレアと仲良くするためだけに頑張る。
そういうお話が、『私の推しは悪役令嬢』の本筋である。
ね、読みたくなってきたでしょう?
私のように乙女ゲーで、精神力を試された百合好きには、ぜひ、ぜひ読んでもらって、乙女ゲーの鬱憤を晴らしてもらいたい。
乙女ゲーの本筋を壊さず、悪役令嬢ときっちり恋仲になる。
そういう神業を楽しめる作品だ。


2、革命せよ

「世界を革命する力を!」と言ったアニメが、百合好きを目覚めさせた人も多いことだろう。
地方に住む私は、再放送でハマった口だった。
世界を革命する力、スゴイんだろうな。
小学生の感じることなんて、そんなもんである。

『私の推しは悪役令嬢』では、この革命が実際に起きる。
フランス革命やら名誉革命やらの歴史の記憶を刺激される「革命」。
乙女ゲーの題材としても扱いやすいものの気はするが、いかんせん、そういうストーリーをプレイした記憶はない。

考えてみれば、革命って身分制度がガラッと変わることである。
基本的に、上が下に、下が上になって、特権が排除される。
これは乙女ゲーの世界観とは相容れないだろう。

乙女ゲーの主人公は、大抵、平民出身だ。
平民出身の普通の女の子がひょんなことから(特別な才能だったりする)、特権階級の仲間入りをして玉の輿にのる。
正しい乙女ゲーの楽しみ方はそんな感じのはず。
そうなると、特権階級がなくなる革命はテーマとして扱いづらい。
玉の輿にのったはずが、革命で大変なことに……なんてゲームは珍しいだろう。
あるとすれば、革命軍側も選べるつくりになるに違いない。

閑話休題。
とにかく、乙女ゲーと革命は両立がしづらい。
『私の推しは悪役令嬢』では、これが上手いこと両立するのだ。
むしろ、革命がいちばんのスパイスになっているとさえ言える。

主人公は平民出身だが、悪役令嬢は悪役令嬢らしく、高スペックな貴族様である。
革命で最初に狙われる存在だ。主人公であるレイは、悪役令嬢であるクレアを助けるために、最初から暗躍する。
ここが面白い。
レイは主人公だが、みんなのヒーローではない。
レイはひたすらクレアのためだけに頑張っているのだ。
そのためにしか、行動しない。

そんな百合もの、好きになるに決まってると思いません?
最後まで読み終えて、「ああ、レイはクレアのために、こんなに行動してたんだな」と思える。
もう一度、最初から読み直したくなる。
そういう百合小説が、『私の推しは悪役令嬢』なのだ。


3、セクシャリティについて

セクシャリティについて。うーん、このごろ、こういった内容に踏み込むことが多い気がする。
年をとったからだろうか、いろいろ難しいことも含めて考えたくなるようだ。
もちろん、百合が尊いのは変わらないし、ニヤニヤできるのも変わらない。

「百合」という文化が、確実に数を増やし始めている。
それにより、いろいろと、はっきりさせたい部分が増えてきているのだろう。
つまり、百合ははじまったばかり。まだまだ、これから面白くなる、と思う。

さて『私の推しは悪役令嬢』は、ひじょーにLGBTに踏み込んだ内容になっている。
ただの百合小説では終わらない。主人公をきちんとしたLGBTのキャラクターとして描写している。
百合とLGBT。これを創作という舞台で、同じものとして扱うのは危険である。

百合はファンタジー。そういう言葉を聞いたことがある人も多いだろう。
そう、百合はファンタジー(想像上のもの)なのである。
ファンタジーだから、萌えないとか、意味がない、とは決して言わない。
だが、ファンタジーを現実の問題(LGBT)にかぶせるのは、危険そのものだろう。

このごろの百合小説は、ここらへんも頑張っている。
百合でありながら、LGBTをしっかり扱うことで、ファンタジーの中にいながら、現実について考えることができる。
これはスゴイ。
セクシャリティという繊細な問題を、百合好きに、共感させながら勉強させている。
みんな、百合を好きになれば、世界は平和になるんじゃないだろうか。
(百合には派閥が多いので、それはそれで対決が起こりそうだが)

百合の世界で、セクシャリティを真剣に扱う。
その一番の方法はしっかりと理由を書くことだ。

なんで、その人が好きなのか。
なんで、同じ性別を選ぶのか。
女性キャラクターが多いが、男性も同じくらい魅力的に描かれている。
その中で女性を選ぶ意味を、われわれ読者は真剣に考えなければならない。

レイは、なんとなくクレアを好きになるわけじゃない。
ひとりの女性として、ひとりの女性を好きになる。
とくに印象に残るのは、この一言だろう。

「好きになった人が、たまたま同性だっただけ……そんなのはキレイごと。同性愛者にも、性別は関係する」

これが響く。
「そりゃそうだ」と目からウロコの気分だ。

異性愛者が同性を好きになることがないように、同性愛者は異性を好きになることがない。
異性愛者は、自然と異性を好きになる。同性愛者は、自然と同性を好きになる。
そういう明確な隔たりが両者にはあるのだ。わかりあえることは、きっとない。
なぜなら、完全なる感覚の違いだからだ。

理論があるなら理解できる。
「〇〇だから、好き」だったら、〇〇を理解しようとすればいいのだ。
しかし、この問題に、〇〇はない。
「そういうもの」なのだ。

こうやって書いてみると、多様性を受け入れられることの大切さを実感できる。
「多様性を受け入れる」という意味は、「違いを理解して、許す」ということだと、勝手に思ってる。
世の中、「多様性が大切」というわりに、「多様性をどうすればいいのか」をはっきりさせてくれない。

私が思うに、多様性は違いを認めること。そして「そういうのもあるよね」となることだ。
違いがわかる。これが第一歩。
そして、それを排斥せずに受け入れる。こういうことなのだろう。
これって、すごく西洋の文化だなぁと思う。まぁ、こういう話をしだすと長いから終わりにしよう。

ただの百合小説ではなく、一歩踏み込んだ内容を求めている人。
『私の推しは悪役令嬢』を、ぜひ読んで欲しい。


まとめ


いろいろ書いてみた。
百合小説の良いところは、百合マンガよりも、世界観を深く掘り下げられる部分にある気がする。
文字は、細部まで事細かに映し出す。世界観を作り出す。

このごろの百合小説は、ただの百合に収まらない。
セクシャリティという難しい問題にも突っ込んでいく。
誰もが自由に、好きなものを楽しめる。
そういう世の中に近づいている気がする。

とにかく、『私の推しは悪役令嬢』
これは、悪役令嬢ものの百合小説で、読むべき作品だ。
キンドルという手に入れやすい形で販売されている。
新しい百合の世界観を手に入れるには、うってつけの一冊だと思う。




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