
にほんブログ村
吸血鬼と百合の歴史は、意外と古いって知ってますか?
吸血鬼とは、みなさん、ご存知のように「人の生き血を吸う」存在です。
それ以外にも「太陽の光が苦手」とか「処女の血を好む」とか、枝付されてる部分は多々。
前は怖い存在として描かれることが多かった吸血鬼も、時代が進むにつれて、だいぶ可愛らしくなりました。
変わらないのは「人の血が必要」という部分。
まぁ、これは、吸血鬼の定義だからしょうがない。
女吸血鬼が主人公の場合、そりゃ、見た目としては「女×女」になるわけで。百合好きとしては、見逃せない部分ですよ。
吸血鬼と百合の発端ともいえる小説「カーミラ」は、まさしく耽美的百合小説の匂いがします。
内容について語ると長くなるので、今回はハショリますけどね!
以前書いた記事などもあるので、気になる人は参考までにどうぞ(→『吸血鬼×百合の文化は140年近くある伝統芸能』)
こんな小説が百年以上前に書かれているんですよ。
いやー、人間、惹かれる要素は変わらないんですね。
なんで、こんな話をするかと言うと【ひきこまり吸血姫の悶々】という小説を読んだから。
GA文庫優秀賞の作品です。
この話に「百合とは書いてないけど、百合が多く出てきますよー」という話をします。
表紙はこんな感じ↓
「私は引きこもる!!!」と力強く宣言してます。
が、そうはいかなくなっちゃったのがストーリーです。
優秀賞受賞作品なだけあって、構成がすごく綺麗。
百合が増えたとはいえ、まだまだ、百合小説は少ないです。商業作品は片っぱしから読んで、レビューする心意気で行こうと思います。
目次
○とにかく、テラコマリが可愛い
○キャラ的には、敵役がツボ
○主従百合が基本です
感想、見どころ
○とにかく、テラコマリが可愛い感想、見どころ
とにかく、テラコマリが可愛い。これに尽きる!
いや、それで終わり?!というツッコミはわかります。
わかりますが、とにかく、可愛いんですよ。
あらすじにも書いてあるように、テラコマリは、最弱の吸血鬼です。
ガンデスブラッド家という、吸血鬼の名門なのに、血が飲めない。
血が飲めないということは、成長できない。成長できないということは、最弱。
と、非常にわかりやすい三段論法で、テラコマリは最弱と証明されます。
彼女が最弱の証拠は山程あります。吸血鬼であれば、身体能力に優れているはず。
でも、テラコマリは運動神経激ニブです。
次に、吸血鬼の特徴とされる強大な魔力。
これも、サッパリ。魔法を使うことさえできない有様。最後に、極めつけ。
彼女は学校に行くのが嫌になり、引きこもっています。うん、書けば書くほど、最弱を裏付ける吸血鬼じゃないでしょうか。
そんなテラコマリが、父親とメイドの陰謀により、将軍なんて職業に着いちゃったから大変です。
……コネで将軍職に娘を就職させられる父親とか怖い。
しかも、テラコマリが将軍として率いる部隊は、いわゆる問題児集団。
トップが弱いと思えば、下剋上は当たり前の世界です。
そんな中で、戦いを嫌い、平和大好きで、激弱なテラコマリが生活をするわけです。
問題が起きないはずがない!
毎回のように、テラコマリが激弱だとバレそうになります。
それを、どうにかこうにか、隠して乗り越えていくのが、前半。
後半になると、きっちり、テラコマリの出生の秘密とか、出てきてワクワクします。
まぁ、彼女が可愛いのは変わりないんですが。
ここで、問題発言。
可愛いだけの女の子って意味あります?
いや、意味はあるよ。可愛いは正義だよ。可愛い女の子は国宝だよ!……とは、わたしが、学生時代から友人に言い聞かせてる言葉です。
でも、言いたい。
可愛いってのは、何も容姿が良いだけが条件じゃないんだよ。
容姿が良いだけなら、ある程度年取った人間すべて、可愛くなくなりますから。
外側って、それだけの意味ですよ。
内側が可愛いと、外側がそれなりでも、めっちゃ可愛く見えるんですよ。
テラコマリは、外側も一億人に一人の美少女らしいのですが、何より性格が可愛いってことよ!
普通、名門なのに最弱とか、心折れます。歪みます。
権力だけを傘に来てイジメとかしちゃう人が多いんじゃないでしょうか。
テラコマリだって、やろうと思えばやれたはず。
実際、テラコマリが事件に関わった際には、お父さんがもみ消してますから。
権力だけで、引きこもることもなく、光の道を歩いていけたはずの少女。
そんな彼女が、父親の力を借りるでもなく、腐ることもなく、真っ直ぐなまま生きてるんですよ。
それが、この物語で何よりの奇跡だと思います。
物語の後半では、ここらへんにぐっと踏み込んでいきます。
コメディチックな前半で手を止めず、後半まで一気に読んでみてください!
○キャラ的には、敵役がツボ
歪まなかったことが何よりの奇跡と言いました。
テラコマリは、そういう奇跡的な主人公です。
じゃ、逆に、歪みまくったのは、誰か。
そりゃ、もちろん、テラコマリに恨みを持つライバル役――ミリセントですよ。
彼女の歪みっぷりは、見事です。
まずね、父親が歪んでるの。
テラコマリの父親も娘のためなら何でもするバカ親でした。
ミリセントの父親は、また違うベクトル。
娘をまったく愛してないんですよ。
いや、愛し方が、個人を認める方向じゃないのね。ライバルであるガンデスブラッド家に勝つことだけが目的だから。
ミリセントにも、ガンデスブラッド家より優れた存在になるように、手間暇惜しみません。
父親らしい優しい言葉とか、ないけどね。
【ひきこまり吸血姫の悶々】は、基本的にコメディ。
テラコマリの視点で話が進む時は、コメディしかないとさえ言えます。
それが、他の人視点になると、すべて変わります。
こういうところが勘違いものの面白さだと思います。
ギャップがあればあるほど面白い。
面白いんだけど、ライバルであるミリセントの視点は、ちょっと可哀想過ぎて、涙腺が刺激されました。
特にミリセントが可愛がっていた犬が死ぬシーン。
あれは色々考えさせられてヒドイ。
ミリセントの物語部分って救いがないんですよ。
父親は見てくれない。
師匠はミリセントを都合よく扱う。
自分より低能のはずのテラコマリには同情される。
誰一人として、ミリセントという少女を理解してあげません。
これって何よりヒドイと思いませんか?
愛犬が死んだのさえ、病死じゃなくて、能力を開花させるための所業なんじゃないかと思います。
ミリセントは、ヒドイ奴ですよ。
歪みまくったせいで、人を傷つけることでしか、自分の価値を感じられなくなったんですから。
人を殺す。自分良い弱いやつを踏みにじる。テラコマリに復讐する。
ミリセントの中にあるのは、それだけです。
普通の幸せを感じられない。ある意味人間の悲劇です。
何より悲しいのは、ミリセントがそうなった理由を誰も知らないこと。
読者であるわたしたちは、わかってます。ミリセントに何があって、そうなったのか。
仕方なかったんだなと思えなくもない。そういう微妙なラインに彼女は立っています。
(仕方ないと思いたいんだけど、どうしてもやってることが酷すぎて)
誰にも理解されない敵。
わたしたちしか、理解できないキャラ。
これって、どんなに歪んだ存在でも、読者心をくすぐられてしまうと思うのですが……どうでしょうか。
○主従百合が基本です
さぁ、やってまいりました。
わたしが一番語りたかった部分ですよ!
【ひきこまり吸血姫の悶々】は、最弱の主人公が将軍なんて地位について、最弱がバレないように頑張る話です。
魔法が使えないのをバレないように、罠を張ったり。
運動神経がないのをバレないように、メイドが華麗なフォローを入れたりします。
最弱を最強に勘違いさせるって、大変ですよ。
できないことを、できているように見せるわけですから。
それをメイドであるヴィルは、テラコマリのためにやってのけます。
ヴィルは能力が非常に高いメイドです。
魔法や身体能力はもちろん『烈核開放』とかいう、特殊なスキルまで持っています。
この『烈核開放』は、話のキーになる言葉です。
というのも、この物語の世界、基本的に人は死にません。死んでも復活します。
魔核に接続された人間は、寿命以外で死ななくなるという「何それ?」な世界です。
死んでも蘇るという状況のため、人は娯楽を求めて戦争を起こしてるわけです。
もちろん、魔核の力が効かないところでは死にます。
回復させない武器も登場します。
「死なない」というのは、それほど人間の精神状態に影響を与えるわけです。
そんな中で『烈核開放』というのは、魔核から離れ、烈核を使い、特殊能力を使うというもの。
魔核で仕える魔法とは比べ物になりません。
この『烈核開放』を使えるようになりたくて、ミリセントは過酷な修行を受けることになります。
テラコマリが最弱な理由も、『烈核開放』に隠されています。
まぁ、彼女の魅力は、性格だと書いたので、テラコマリの特殊能力が何か確認してみてください。
強すぎる力も考えものだなと感じると思います。
話は戻ります。
テラコマリを最強に見せるために、ヴィルは色々行動するわけです。
面白いのは、最初からヴィルのテラコマリ愛がMAXなところ。
テラコマリに迫るのは、毎朝の習慣のようです。
テラコマリが率いるのは、弱いのがバレたら、即下剋上の軍団です。
バレないように必死にヴィルは働きます。
ぶっちゃけ、最初からヴィルがトップに上がったほうが早いんじゃ……と思ってしまう有能さ。
そこまでして、テラコマリを支える理由も、きっちりと説明されています。
最初から愛がMAXすぎて、引いていた人。安心して下さい。
きちんと、百合好きのツボをついた、ヴィルトテラコマリの関係が描かれてますよ。
ただ、この部分は、物語の本筋過ぎるので、秘密にしておきます。
まぁ、楽しいのは保証しておきます。
まとめ
まとめ
吸血鬼とか、死なない設定とか、いろいろ面白そうなストーリーです。
一応、完結してはいますが、話を続けようと思えば、まだまだ続けられそう。
ライトノベルの王道に、百合を乗せたら、こんな話になるのかなと思えます。
贅沢を言うならば、テラコマリとヴィルの関係を、さらに一歩踏み込んで欲しかった!
まぁ、妄想の余地があると思えば、言うことなしですね。
【ひきこまり吸血姫の悶々】
ぜひ、お試しください!
リンク

にほんブログ村