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悪役令嬢と百合。
この2つの相性の良さは、今までも何度か語ってきた。

悪役令嬢ものの鉄板は、勝手に悪役にされ、婚約破棄される悪役令嬢だろう。
そして、その悪役令嬢が華麗に生活をすることで、多くの読者は楽しみを得る。

――じゃ、今回、買ったこれは、悪役令嬢ものにしても良いものだろうか?

わたしは頭を悩ませている。
【転生王女と天才令嬢の魔法革命】
導入部分は、あきらかに「悪役令嬢もの」

なんといっても、理不尽な婚約破棄から始まる。
婚約破棄されるのは、タイトルの【天才令嬢】の部分を担うユフィ。
身分は公爵令嬢。天才の部分は、魔法の才能だ。
彼女が婚約者である第一王子から夜会で婚約を破棄される。理由はテンプレだ。

問題はここから。
窮地に陥ったユフィを颯爽と助けに現れるのが転生王女であるアニスだ。
颯爽といっても魔力のコントロールを誤って窓ガラスを突き破る。常識破りの方法だ。
だが、転生王女なだけあって状況の把握は素早い。

弟がいらないといった婚約者を、代わりに貰うという。
そして、ユフィの手をとって、さらってしまうのだ。
ううむ、鮮やか。
ここまで素早い誘拐もないだろう。

こんな導入をする【転生王女と天才令嬢の魔法革命】
あらすじには、きっちり「王宮百合ファンタジー」とか書いてあるし。
百合好きとして、読まないわけにはいかなかった。
さらにはWebで、Web版も掲載されているので、気になった人はすぐに見に行って欲しい。

ここから、さらに【転生王女と天才令嬢の魔法革命】の魅力を語っていきたい。




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感想

○アニスの葛藤とユフィの悩み

転生王女のアニス、天才令嬢のユフィ。
この二人は、まったく対照的なキャラクターだ。

アニスは魔法に憧れている。
彼女には転生する前の記憶があるので、気持ちは十分わかる。
魔法がない世界から、魔法がある世界へ転生したら、誰もが憧れるだろう。

残念なことに、アニスは魔法が使えなかった。
貴族や王族であれば、大なり小なり使える。その魔法が使えない。
それは、王族として失格の烙印になる。

魔法が使いたいのに、使えない。それでも、アニスは諦めなかった。
前世の記憶を使い、自分の夢を叶えるために奮闘する。
その結果、ついたあだ名が「キテレツ王女」だったりするのだから、この世界の人にとって、魔法が使えない人間が魔法を使おうとする姿は、よほど奇異に見えたのだろう。

そにしても【転生王女と天才令嬢の魔法革命】は、今どき珍しいくらい、まっすぐなキャラクターが主人公になっている。
ラノベ全盛のこの頃、転生者は大抵最初に絶望するのだ。
立場だったり、周囲に騙されたり、予想外なことだったり。理由は何でも良い。大体、一回は折れる。
その中で、アニスは昔ながらのまっすぐなヒーローとして描かれている。

不可能を不可能と諦めない。
不可能を可能にすることを考える。
そして、実行する。

アニスは自分がしたいことを絶対に諦めない。
王族の立場よりも、自分の欲望を優先する。一応、周囲のことも考えるが、役割より自分。
それがアニスだとわたしは思った。

そんなアニスに対して、ユフィはまったく逆
ユフィは魔法の適性がありすぎる。
全属性の魔法を使える。王族の嫁ぐために、マナーや勉学もトップクラスだ。

彼女は、王妃という役割に必要なことを、必死にやってきた人間なのだ。
そこに自分の欲望はない。ただ、必要だからやっている。
それが一番顕著になるのが、作中でアニスがいないときのユフィの描写だ。

アニスの助手として、離宮に住んでいるユフィ。アニスがいないと暇な時間ができてしまう。
今まで王妃教育のため暇な時間などなかった。
ユフィは何をしていいかわからない。自分の欲望がないから、どうしていいかわからないのだ。

自分のために生きているアニスと、役割のために生きてきたユフィ。
この二人の対比。ぜったい、何か起こるに決まっている。
そのワクワク感が、全編を通して漂っている。

現代人も、アニスとユフィのどちらかに共感できる人が多いと思う。
まぁ、ふたりとも両極端だけど。
自分がどっちか考えながら、読んでみるのも面白いだろう。

仕事がないと暇という人は、きっとユフィタイプ。
仕事より趣味を入れたいという人は、アニスタイプ。
そんな風に考えると、ふたりがもっと身近な気がしてくる。

まとめるとこんな感じ↓

転生王女


○魔法が使えない、魔法使い

転生モノで珍しい。アニスは魔法が使えない主人公だ。

転生モノは、大抵、最強ものと組み合わされている。
そうなると、魔法がバンバン使えたり、使えなくても、別のスキルがあったりする。
その中で、アニスは異色だろう。

彼女は王族でありながら、魔法がまったく使えない。
これは、魔法を、さらに言えば魔法を起こしてくれる精霊を、重要視する国では致命的なことだ。
「いや、魔法を使えなくても、スキルが有るはず!」
なんて期待してもムダ。

彼女に魔法は使えないし、代わりになるスキルもない。
ほんとうに、普通に、転生しただけなのだ。
しかも、彼女の夢は「魔法使いになること」。「みんなを笑顔にする魔法使いになること」だ。
特にこだわっているのは、空を飛ぶこと。これは大きすぎる障害ではないだろうか。

気持ちはわかる。空を飛ぶのは気持ちいいだろう、と思える。
飛ぶ鳥に憧れるのと同じ気持ちだ。子供時代に誰もが、一度は通る道だろう。
そして、無理だと諦めるのだ。

アニスはそこで諦めない。
魔法が使えたら飛べるはず――魔法は使えない。なら、新しい技術を作ればいい。
そんなふうにして、アニスは「魔学(魔法科学)」という学問を作ってしまう。

チートも裏技もなにもない。
純粋な分析と研究と試行錯誤。
その繰り返しで、アニスは自分の夢を叶えようとするのだ。

スゴイ以外言えない。
魔法が使えないことなど、微々たるものに思える。
そのうえ、アニスは、魔法への憧れを捨てているわけではないのだ。

ユフィが魔法を使う姿を見て、見惚れる描写がある。
「百合だ!」と沸き立つ心を抑えつつ、その描写を見ると、彼女は息をするように自然と魔法を使うユフィに見惚れているのだ。
自分が使えない技術をすんなり使う人間に見惚れられる。その心根の素直さも称賛に値するのではないだろうか。
……ちょっとは嫉妬したり、妬んだりしていいと思うんだけどね。

そして、魔法が使えない魔法使いは、魔法に愛された少女を魅了する。
ユフィは役割以外、何も持たない人間だった。
そんな彼女が、自分の夢のために行動する人間に影響を受けないわけがない。

最初、及び腰だったユフィが、徐々にアニスとの距離をなくす。
最終的に一緒にドラゴン退治に行く。
アニスを助けるために、魔法を使う。アニスの心配をする。

もう、全部が全部、尊すぎる!
文章が読みやすいので、一気にラストまで読むことができるだろう。
ぜひ、楽しんで欲しい。



まとめるとこんな感じ↓
転生王女2



○Web版との違いも面白い

【転生王女と天才令嬢の魔法革命】が、面白い理由として、Web版の存在がある。
Web版では、少し内容が異なっている。特に1巻のクライマックス。ドラゴンを倒すシーン。
あそこが、一番違っていた。

Web版との違いは、結構大きい方だと思う。
他にもWeb連載から書籍化した作品を何個か読んだことがある。
その中でも、物語の根幹から変化させている部分がいくつかあるように思えた。
そのぶん、二人の絆や、信頼関係の構築が目に見えて伝わって良かった部分もある。

気になるのは、この後だ。
Web版では、完結まで作品が描かれている。
4章まである内の1章部分が、今回の一冊だ。

2章以降で、あのドラゴンとの戦いは重要な伏線になる。
そこを変化させているので、どうなるのか、楽しみ半分、怖さ半分という感じだ。
まぁ、この1巻の面白さを見る限り、心配はいらないように思える。

物語としても、百合としても、面白さが増した作品だった。
Web版が気に入ったら、書籍も読み比べてみることをオススメしたい。

まとめるとこんな感じ↓
転生王女3


まとめ


【転生王女と天才令嬢の魔法革命】買ってよかったー!
書籍化して欲しい百合小説の一つだったので、願いがかなった。

出会いからして、婚約者を奪ってるし。
すぐさま恋愛にならず、徐々に信頼関係が深まるし。
最終的には、一緒に戦うし。
百合的に、非常に尊い二人なのだ!

さすが、帯に「尊い」って書かれるだけはある
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あと、気になったのが、百合って書いてあるけど、恋愛までなってないこと。
いや「ほとんど付き合ってるみたいなもんじゃないか」とかいうツッコミはわかる。

あのラストだもの。わたしも、そう思いたい。
だけどもね、一応、告白はしてないのよ。
そして、恋愛感情の自覚もない。

それでも「王宮百合ファンタジー」って書かれるのよ。
読んでいる百合好き(わたし)も満足なのよ。

これって、やっぱり百合に必要不可欠なのは、恋愛じゃないってことの証明になるのじゃないかしら。
もちろん、くっついて欲しい二人よ。くっつかないで欲しいとか、微塵も思ってない。
この内容で「王宮百合ファンタジー」って言って良いってことは、世の中の百合好きは、恋愛じゃなくても百合みを感じ取れるってことじゃないかしら。

むしろ、こういう恋愛一歩前くらいの関係性が好きな人が良いのが、百合業界な気もする。
だからこそ、恋愛が濃く描かれる話も多く出たんだとは思うけど。

とにかく、百合好きなら、読んで損はない話……というか、読まないほうが損
久しぶりに美味しい読後感だったし、ぜひとも続刊が出てくれることを祈ってみる。
できれば、完結まで書籍化して欲しいところ。

やはり紙の本の売れ具合によるらしいし、ぜひとも、お手伝いをお願いします!
百合小説に清き一票を!



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